ひたね

ひたね


小さなひたね

燃え上がり、不意に

風に吹かれて

焔に向かって

絵を書いた

焦げた魂の

中核

焼き尽くして

立ち去っていく

案山子の焼け跡に

灰一片

百年の古樹

花が散り

枯葉に花弁

細長く伸びて

何時か空に

届く

剥げた漆の門

彼岸の手が

ノック

流浪した

幽霊に

おかえり

千年の古刹


千年の古刹


十五重塔の

近くの階段の隅っこで

風化されてる

ツバメの白骨は

黒く剥がれた羽に

潜り込んでる


少し離れたところで

蟻の群れは

りんごのカスを囲い詰め

匂いを嗅いでる


湖の真ん中に

聳え立つ観音様を

仰ぎながら

涙ぐみながら

湖の深さを探るように

少年は

飛び降り入水した


お坊さんのお経の声と

古刹をまとうたち煙は

交じり合って

吹いてきた風に

切り裂かれた

2014.08.16